プレス リリース

世界初、1秒間に10回、模擬燃料に対するレーザーの連続照射実証を実施 ―レーザーフュージョンによる発電実証の早期実現を目指して―

株式会社EX-Fusion(代表取締役社長:松尾一輝、以下「EX-Fusion」)は、レーザーフュージョン基盤技術の実証研究施設において、世界で初めて1秒間に10回、模擬燃料に対して高精度にレーザーを照射し続けることに成功したことをお知らせいたします。これは、レーザー核融合による連続運転に関する極めて重要なマイルストーンであり、今後の発電炉の商用化に向けた大きな一歩となります。

1.背景・目的
エネルギーの安定供給とカーボンニュートラルの実現に向け、次世代のクリーンエネルギーとして核融合技術への注目が世界的に高まっています。中でも、レーザーを用いた慣性閉じ込め方式は、安全性の高さに加え、実験的に唯一エネルギー純増(出力>入力)を達成した方式として、今後の実用化が期待されています【参考:米国・リバモア研究所(NIF)】。
EX-Fusionは、日本初のレーザー核融合スタートアップとして、商用炉の実現を目指して基盤技術の開発と実証を推進しています。2024年度に改定された「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」においても、2030年代の発電実証が国の目標として明示されており、今回の成果はその実現に向けた「連続運転技術の確立」という重要ステップとなります。

2.研究概要
今回の実証は、浜松市のEX-Fusion研究施設にて、自社開発のターゲット供給装置およびレーザー制御装置を用い、模擬燃料(ターゲット)に対し毎秒10回(10Hz)という高頻度でレーザー照射を行ったものです。この結果、照射の高精度な連続性と安定性が確認され、プラズマの継続的生成にも成功。これは、将来の商用炉で想定される「1秒間に複数回の燃料照射」という運転条件を実験的に満たした、世界初の成果となります。

3.主なアップデートと今回の意義
(1)浜松施設における装置導入と連続照射環境の構築
EX-Fusionは、自社開発のターゲット供給装置およびレーザー制御システムを浜松施設に導入し、10Hzでの安定照射を実現。これにより、長時間連続照射を見据えた運転環境の整備が本格始動しました。

(2)「1時間連続中性子発生」実現に向けた課題の明確化
初期実験を通じて、今後必要となる技術的改良項目、レーザー出力の増強、照準精度の向上、排熱処理などが明確になりました。これにより、次フェーズへの移行に向けた技術ロードマップの具体化が進んでいます。

(3)レーザー核融合発電炉における工学的意義
レーザー核融合は、理論的・実験的にエネルギー純増を確認された唯一の方式ですが、連続運転の実証例は世界的にも乏しいのが現状です。今回の成果は、その運転環境の技術的成立性を世界で初めて示した実証であり、社会実装に向けた信頼性の裏付けとなります。

4.今後について
EX-Fusionは、今回の成果を起点として、「1時間以上の中性子連続発生」の実現を次のマイルストーンに設定。今後は、より高エネルギーでのレーザー照射、システムの長時間安定稼働、ターゲット供給精度のさらなる向上を目指して開発を進めます。併せて、国内外の大学・研究機関・企業との連携を強化し、レーザー核融合商用炉の社会実装を加速してまいります。

                                                    以上

【用語解説】
レーザー核融合商用炉:レーザーを用いた慣性閉じ込め方式により燃料を高密度に圧縮し、核融合反応を誘発して熱エネルギーを得る次世代発電炉。主に海水由来の重水素・三重水素を燃料とし、高レベル放射性廃棄物をほとんど発生させないクリーンエネルギー源とされる。小型化が可能で、再生可能エネルギーと同等の出力調整性を備える。

【参考文献】
・米国ローレンス・リバモア国立研究所(NIF)によるエネルギー純増実験
https://lasers.llnl.gov/science/achieving-fusion-ignition
・「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」
https://www8.cao.go.jp/cstp/fusion/index.html

 

レーザー核融合商用炉の概念図(チャンバー中央に燃料を射出して、周囲から高エネルギーレーザーを照射することにより核融合反応を起こす)

 

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